[セシスコ]良い子悪い子
R15
優しい顔をしているのに、その身体は厚みがあった。
跳ねる体が逃げるのを咎めるように掴む手のひらは、固い剣胼胝があって、大きい。
セシルの体温を内側で感じている。
奥を突き上げる逞しさに、どうしようもなく意識が溶けて浚われた。
必死に彼について行こうとしても、いつの間にかそんなことを考える余裕すらなくなっている。
何度目か知れない果てまで連れていかれて、頭の中が真っ白になった。
「あ、う、んぁ……!」
「は……っ、スコール、僕も……っ!」
喘ぐスコールの耳元で、切羽詰まった声が零れる。
来る、と思った瞬間に、スコールはぞくぞくとした感覚で喜びを感じた。
どくり、と中に注ぎ込まれるのが判って、スコールは一際高い声を上げる。
赤く染まった躰が弾むのが止められない。
中に注ぎ終わったものが、ゆっくりと内側を擦りながら出て行く。
まだそこにいて欲しいと体が訴えて締め付けたけれど、首筋を柔く撫でてあやされた。
それで体の反応が止まることもないのだが、結局、彼は留まってはくれなかった。
「は、……っん、あぁ……っ」
蓋を失ったところから溢れ出す感触があって、スコールは悩ましい声を漏らす。
身じろぐ体を、大きな手がそっと撫でて慰めた。
乱れに乱れた呼吸は、そう簡単に鎮まってはくれない。
ベッドシーツに顔を半分埋めたまま、はぁ、はぁ、と熱を孕んだ呼吸を繰り返す。
すると肩からそっと抱き起されて、仰向けになった。
首の後ろを太い腕がしっかりと支えながら、頭を少し起こされて、近付いて来た綺麗な顔に、唇を塞がれる。
「ん、ん……っ」
閉じることが出来ない口の中に、とろりとした液体が流れ込んでくる。
水分補給の為の水だ。
汗だくになった身体が、足りなくなった水気に喜ぶのが判った。
こくり、と液体を飲むと、唇が解放される。
長い睫毛を携えた藤色の目が、じっとスコールの顔を見つめていた。
「大丈夫かい。水、まだ飲める?」
「……は、ふ……」
スコールが小さく頷くと、セシルはサイドチェストに置いていた水差しグラスを取る。
一口それを口に含んで、またスコールにキスをした。
グラスの水が半分より少し減った頃に、スコールはもういい、と言った。
セシルは小さく笑みを浮かべ、汗の滲んだスコールの頬をそっと撫でる。
抱き支えていたスコールの首はベッドへと戻されて、疲れ切った躰が楽な体勢に整えられた。
情交の間に昂った熱が、汗で奪われて行かないよう、スコールの体がシーツで包められる。
「……セシル……」
「うん?」
名前を呼べば、何、とセシルは答えた。
スコールは、綺麗な面で見つめる男を見上げて、
「……もっと、したい」
スコールの言葉に、セシルは眉尻を下げて苦笑する。
「嬉しいけど、今夜はここまでにしよう。君にも負担をかけてしまう」
頬に手を添えるセシルは、芯からスコールを気遣っている。
それはスコールも判ったが、望まぬ答えに唇は尖った。
「あんた、俺をそんなにか弱いと思ってるのか?」
「そう言う訳ではないけど。でも、結構大変なことをしているんだよ。今日も意識が飛びかけていたし」
「……それは、あんたの所為だろ。あんたがいつも……いい、ところばかり、突くから……」
言いながらスコールの顔は赤くなる。
初心な反応を隠せない少年に、セシルはくすりと笑って、濃茶色の髪を撫でた。
「感じてる君の顔が可愛いから、つい、ね」
「……」
セシルの言葉に、スコールは益々顔を赤くする。
しかし、拗ねた表情が取れることはなかった。
隣に向き合って横になっているセシルの方に、スコールは重い身体を摺り寄せる。
いつも無骨な鎧に覆われたセシルの体は、しっかりとした筋肉があって、固い。
その胸元に顔を擦り付けてやると、セシルの腕が包み込むようにスコールの背中に回った。
閉じ込めてくれる腕の中で落ち着きながら、スコールは呟く。
「……どうしたら、あんたは二回目をしてくれるんだ」
聞きようによっては、中々大胆なおねだりだ。
しかし、スコールはそれがいつも叶えられないことが不服だった。
上目に睨むように見つめるスコールに、セシルは困った顔をしてみせる。
「君が良い子で寝てくれたら、明日にでも教えるよ」
「それは教える気がないやつだろ」
躱そうとしているのが判って、スコールの声が低くなる。
視界の端でちらちらと揺れている銀糸を摘まんで引っ張ると、「いたた」と言う声があった。
「そんなことは───」
「ないって?」
「うーん」
肯定も否定もしないものだから、やっぱり教えないんだな、と言うことが判る。
曖昧に逃げようとする時は、大抵、そういうことだ。
ついでに、既に何度もそうやって躱されているものだから、いい加減にスコールも、事後の甘さに誤魔化されるほど子供ではなかった。
すぐそこにあるセシルに首筋に歯を立ててやる。
「痛いよ、スコール」とセシルは言ったが、顎に力は入れていないし、単に当てているだけだ。
セシルが参ってしまうようなものでもない。
後に多少、痕にはしてやるつもりで噛んだが、フルアーマーを身に付ける彼なら問題あるまい。
「君に誘って貰えるのは嬉しいけど、今日も結構、無理をさせたからね。これ以上、君に負担はかけられないよ」
「常套句だ。それを言って置けば、俺が大人しく引き下がると思ってるんだ」
「そんなことは」
「ない?」
「うん、ない」
セシルは頷いたが、スコールの尖った唇は引っ込まない。
この遣り取り自体が、セシルにとっては事後の戯れなのだ。
もっとしたい、とねだってくるスコールを、宥めあやして、寝かしつけるまでが。
スコールは本当に、もっと彼が欲しいのに。
まだ感触が残る内側に、追い打つものが欲しいのに。
じんとした感触が下肢に滲んで、体が目の前の男を欲しがっている。
スコールはセシルの足に自分の足を絡めて、より密着した。
一枚のシーツ以外にまとうものはないから、お互いの中心部がまだ熱を持っているのが感触で判る。
「あんたも勃ってるんだから。したいんだろ」
「それは、否定できないんだけどね」
「だったら」
スコールは意図して膨らんだものをセシルのそれに押し付けた。
汗は引いても、出したものはまだ濡れているから、ぬちゃりとした感触が伝わる。
とくとくと脈打つそれが膨らもうとしているのを、スコールは擦り付けて助長させる。
「ん、ん……っ、ふっ……」
「……いやらしい子だね」
次を欲しがって懸命に誘う少年に、セシルの声が低くなる。
最中にそれが耳元をくすぐる度、スコールの体は熱くなった。
今もまた、燻ぶるものが再点火されて、揺れる腰の動きは大胆になっていく。
「は……っ、セ、シル……っ」
「でも駄目だよ、スコール」
腰を揺らすスコールの体を、セシルが強く抱きしめる。
それ以上、スコールが悪戯が出来ないように、細腰に回した腕がしっかりとした力を籠めた。
ぎゅう、と腰骨が締め付けられる感覚が、拘束に似た錯覚を起こして、スコールの体がぶるりと震える。
「あぁ……っ!」
どくん、とスコールの熱が解き放たれた。
たったこれだけで、と自分の体の浅ましさに羞恥が昇る。
はふ、はふ、とあえかに呼吸を繰り返すスコール。
その項をセシルの指が滑って、ぞくぞくとしたものがスコールの背中を駆け抜けた。
強張った躰は更なる解放を求めて、それを与えてくれる男に縋りつく。
しかしセシルは、スコールを抱き締めたまま、それ以上は動かない。
「良い子だからおやすみ、スコール。ちゃんと眠れたら、明日はまた───ね?」
「セシ、ル……っ」
「本当に。ほら、明日も僕たち、待機番だろう?」
明日、急いで出立の準備はしなくて良い。
だったら尚更、今夜のうちにしてくれないのは何故だろう。
スコールはいつもそれが疑問だけれど、問うてもこんな風に躱されてばかりだ。
……躱されて終わる半分は、自分がこうして熱に浮かされ、考える力を失ってしまうからなのだけど。
抱き締められている内に、跳ねていた心臓は少しずつ落ち着いて、伝わるセシルのリズムと一致する。
そうなると段々と心地良さが勝って、意識がふわふわと浮遊感に誘われてしまう。
「セシル……」
「うん」
「明日、続き……」
「うん。してあげる」
「……うん」
「僕も君が欲しいから、ね」
囁く声に、なんとも言えない充足感が満たされる。
あやされていると判っていても、これ以上に我儘が出なくなるのは、その所為だ。
明日。
明日になったら、今度こそ。
次はこうやって誘ってみようと、ふやけた頭で考えながら、目を閉じる。
眦に触れる柔い唇の感触を覚えながら、意識は夢の中へと揺蕩っていった。
────疲れ切った少年の体は、彼が思っているよりもずっと早く、睡魔に負ける。
それほど彼の体は酷使されているのだが、彼自身はその自覚はない。
(だからこっちが大人にならないとなぁ)
すぅ、すぅ、と子猫のように静かに眠る恋人を見つめて、セシルは眉尻を下げて笑う。
(でも、そろそろ厳しいかも知れないな。判ってやったのか、無自覚なのか判らないけど、あんな誘い方をされるのは……)
濡れた体をしどけなく擦り付けられたのは、全く予想外だった。
この手で抱く度、スコールは大胆さを増して行く。
何も知らなかった体が、日毎に花開いては自分を欲しがるその様は、セシルに得も言われぬ興奮を齎した。
その情動のままに抱いたら、きっと抱き潰してしまう。
前後不覚になったスコールが、泣いてやめてと訴えても、揺さぶることをやめられない。
それでスコールに嫌われることは、多分、ないとは思うけれど、だからこそ、セーブしなくてはならないのだ。
彼の幼い好意に甘えて、無体を強いてはいけない。
例えその無体の原因が、どんなに愛情深くとも。
「……本当に、大事にしたいんだよ、スコール。そう言ったら君は、大丈夫だと言うだろうけど」
スコールをか弱い人間だとは思っていない。
それでも、そんなスコールだからこそ、壊してしまう程に荒々しく出来てしまいそうで、いつも抱く度に歯止めが切れそうになる。
この衝動は、一度吹き出してしまったら、止めることが出来ないから。
眠るスコールの横顔は幼く、少し悪戯心で首筋をなぞると、ぴくりと小さく震えるのが判る。
たったこれだけで、こんなにも良い反応をしてくれるから、今以上のことをしたら、果たしてどんなに乱れてくれるのか。
「見てしまったら、戻れなくなると思うんだ。僕は君が思っている程、優しい男じゃないからさ」
大人びた顔をしながら、スコールはどこか幼い。
そんな彼を怯えさせてしまわないように、セシルは優しい仮面を被っている。
けれどいつか、スコール自身の手で、それが剥がされる日は来るだろう。
愛しい恋人を宥めあやしながら、そんな日が来ることを、心待ちにしている自分がいた。
『アダルティでえっちなセシスコ』のリクエストを頂きました。
もっとして欲しくて、体も使っておねだりするスコールと、煽られても堪えてるセシル。
宥めているけど、本音はそういうスコールのことも可愛いし、もっと激しく愛したいと思ってるセシルです。
セシルに本気を出させたら、スコールは一回後悔しそうですけど、嫌がりはしない。
寧ろ癖になるので、もう一回、が延々続くようになると思います。
一回越えたらブレーキがなくなるのが予想できているので、セシルは尚更耐えているんですね。