[クラスコ]触れ合う為の温度
夏の夜は、冷房の温度を低く設定する。
凍えるほどのことにはしないが、日中よりも、もう少し、温度を下げるのだ。
蒸し暑さも募る季節であるから、なんら可笑しなことはない。
寧ろ昨今の気温の危険性を考えると、夜であろうと冷房を止めることはできない。
ただ、太陽の熱に焼かれる昼日中に比べると、多少は暑さが和らぐから、冷房の設定温度を下げるほどの必要はないものだ。
それでもクラウドは、恋人がシャワーを浴びている間に、しれっとリモコンを操作する。
こうしておけば、この後、存分に恋人を可愛がってやれるからだ。
恋人であるスコールは、中々に気難しい性格をしている。
寂しがり屋の癖に、人に触れられることは苦手で、存外と頑固者なのに、それを表に出すのを嫌う。
歯に衣着せぬ言い方をする割に、自分の物言いが他者を不快にさせることには敏感で、揉め事は面倒と嫌っているから、あまり喋りたがらない。
人の機微にも敏感な節があって、これも含めて、彼の性格や言動に影響を及ぼしていることは間違いない。
そして、思春期の年齢なので性にデリケートなのは仕方がないとして、その癖、スイッチが入ると旺盛に求める。
これがクラウドにはとっては愛らしいもので、恥ずかしがっている様子も、その垣根を越えて甘えたになる姿も、堪らない。
しかしスコールの方は理性が強い性質をしているので、自らそれを暴くことはしなかった。
だからクラウドが少しの準備をする必要がある。
───その為のごくごく簡単な方法のひとつが、冷房の温度設定と言う訳だ。
日中過ごしている時よりも一度、暑そうな日は二度、下げる。
これでシャワーを終えて部屋に戻って来たスコールに、先ずはちょっとした涼を感じさせる。
風呂上りは体が火照っているから、汗ばむのが嫌いなスコールの為に、この時だけは冷風が判る程度にするのだ。
そうすることで、裸身になった時、ひんやりとした空気で囁かな爽快感もある。
「……クラウド」
ベッドに入ったスコールは、赤い顔でクラウドを呼んだ。
二人とも上半身は既に裸で、これからの準備が出来ている。
冷房で少し冷えたクラウドの肌に、まだ火照りを残したスコールの肌が触れる。
スコールの手のひらがするりとクラウドの肩を辿って、首の後ろへと回された。
こうして密着する為にも、部屋の温度は、少し肌寒いくらいにしておくのが良いのだ。
それからは、夢中で熱を交換した。
ベッドの軋む音が絶え間なく、初めはその音に隠れるように抑えていた聲は、次第に大きくなって行く。
やだ、と求める声に応じれば、スコールの奥はしとどに濡れて、クラウドを強く締め付けた。
冷たかったベッドシーツは温くなり、飛び散ったものでシミを作る。
汚れる、とスコールはことに気にするが、部屋の主であるクラウドが気にしないものだから、彼は何度となく熱を放つことになった。
息絶え絶えになるまで混じり合って、クラウドの疲労感も一入に、情交が終わる。
くったりとベッドに沈み転んだ体を抱き上げて、シャワーで軽く洗ってやった。
「中、洗うぞ」
「……ん」
温めの温度に設定したシャワーを、蜜で濡れたスコールの太腿に当てる。
きわどい場所に近付く水飛沫の刺激に、スコールはもどかしさで身を捩っている。
「ん、ふ……う、ん……っ」
鼻にかかった声が零れていた。
もぞ、もぞ、と膝を寄せ、太腿を擦り合わせているスコールだったが、クラウドはその片膝を掴んで大きく開かせた。
全部を晒した格好にされて、スコールは顔を真っ赤にしているが、洗っているのだから仕方がない。
物言いたげな蒼がこちらを見ていたが、クラウドが努めて仕事に集中するのを見て、やがてスコールの体の力は抜けた。
指で広げた秘部から溢れ出してくるものを、丁寧に洗い流す。
敏感な体は感じ入るのを精一杯に堪えていたが、丸まった足の爪先や、殺した声がどうしても反応を覗かせる。
クラウドはむらむらとする己を、精一杯の理性で堪えていた。
「……こんなものかな」
「う……あ……」
クラウドはシャワーの湯を止めた。
スコールは足を大きく開いた格好のまま、はあ、はあ、とあえかな息を漏らしている。
起き上がる気力もないスコールを抱き上げて、寝室へと戻った。
点けっぱなしだった冷房の風が、シャワーで温まった二人の肌を撫でていく。
クラウドの腕の中で、スコールがふるりと身体を震わせた。
「寒……」
「つけっぱなしだったからな。風、少し弱めておこう」
ベッドに入って、スコールをそこに横たえてから、クラウドはサイドボードに置いていたリモコンを取った。
風の強さを“中”から“微”にして、風向きも天井に向けて置けば、冷風が直接当たることはない。
これでよし、とクラウドも布団を引き上げて、スコールの隣に収まった。
シャワー上がりの体の温度と、冷房で冷えた布団の温度差が落ち着かないのか、スコールはもぞもぞと身動ぎしている。
ぬくたまった躰にシーツの肌触りは心地良いが、少し表面が冷たすぎるらしい。
丁度良い温度を探したスコールは、隣にいる男の方へ、ずりずりと近付いていた。
「……」
「ん?」
二人の距離は、もうほとんどなかった。
スコールがあと一回、体を捩って身を寄せてきたら、ぴたりと密着することが出来るだろう。
だが、恥ずかしがり屋の少年は、どうしても逡巡してしまう。
接触嫌悪とまでは言わないまでも、少々触れ合うことに恐怖心のようなものを抱くから、余計にスコールは躊躇うのだ。
そんなスコールに、クラウドはこっそりと眦を緩めて、寝返りついでにスコールの体に腕を回す。
「ほら」
「!」
ぐ、と背中を抱き寄せてやれば、スコールは僅かに緊張に強張ったが、そのままクラウドの方に体を寄せた。
スコールの体は、しっかりと引き締まった筋肉がついているが、まだ発展途上の青臭さがある。
その身体から薄らと漂う、未完成な性の匂いが、クラウドの欲望をまた刺激した。
身を寄せて動かなくなったスコールに、クラウドの手が背中を辿る。
宥めるように撫でながら、時折、意図的に、背筋のラインをゆっくりと下ろしていく。
スコールは、クラウドの指が辿る度に、ぞくぞくとしたものが背筋を端って、堪らず体を撓らせた。
「ん……、クラウド……っ」
咎める声だが、抵抗は弱い。
寧ろ、離れ難さを示すように、スコールからもクラウドの首に腕が回る。
ぴったりと密着した胸の奥から、流れる血が齎す熱と、鼓動のリズムが聞こえる。
そうしてくっついていると、俄かにふるりと震えるスコールの身体反応が伝わった。
「まだ寒いか」
「……ちょっと……」
「冷房、切るか?」
「切ったら絶対暑くなるだろ」
今夜も熱帯夜だと、天気予報士が言っていた。
都会のコンクリートジャングルは、太陽の熱で焼けてしまうと、簡単にその熱を解放してくれない。
安普請のアパートは外気の熱と当たり前に同期してしまうから、寝苦しさを回避したいなら、冷房は夜通しつけるのが賢い選択である。
でも寒いんだろう、とクラウドが言うと、スコールはむぅと頬を膨らませる。
「……こうするから良い」
スコールはクラウドの背中に回した腕に力を込めて、ぎゅう、と抱き着いた。
ついでに、日々の肉体労働でしっかり鍛えられた男の胸に顔を埋める。
文字通り、二人の体はぴたりと隙間がないほどに密着して、お互いの肌の温度を分け与える。
むずかる猫のように、スコールはクラウドの胸にぐりぐりと額を押し付けている。
筋肉量のお陰か、クラウドは少々体温が高いようで、スコールが暖を取りたい時には丁度良い塩梅なのだとか。
けれども、この体温の高さと言うのが、時にはスコールの不快を誘う。
そもそもスコールは極端に暑いのも寒いのも得意ではなく、その上、他者との接触、肌の触れ合いというものに聊か消極的だ。
心を許した相手ならばまだ良いが、それでも、例えば真夏の蒸し暑さの中で抱き合うようなことはしたくない、とのこと。
ただでさえジメジメと蒸されている時の人肌の温さと言うのは、滲む汗の感触も相俟って、不快を誘うものだから仕方がない。
スコールは、殊更そういった感触に敏感な性質なのだ。
だからこんな蒸し暑い夜は、冷房機能が欠かせない。
文明の利器に感謝だな、と恋人が遠慮なくくっついてくれる理由作りに役立つ家電に、クラウドは満足を覚えていた。
「んん……」
すん、とスコールが小さく鼻を鳴らす。
鼻呼吸で零れる息が、クラウドの胸元をちらちらとくすぐっていた。
それがまたクラウドの欲を煽るものだから、下半身は勝手に元気になっていく。
クラウドにとっては、まだまだ夜は長くて良いし、体力も余っていた。
しかしスコールの方はどうかな、と受け身の側として負担が大きいであろうスコールの状態について思慮していると、
「……クラウド」
「ん?」
「……もう、終わり、か?」
十分にまぐわって、シャワーも浴びて、ベッドに戻った。
このまま眠り落ちるに条件は十分だ。
だが、スコールの方からそんな風に言ってくれるのなら、クラウドは全く吝かでない。
「まだ眠くないか?」
「……」
スコールは答えなかったが、恥ずかしがれば逸らされる筈の蒼が、じっとこちらを見ている。
言葉が苦手なスコールだが、瞳はそれ以上にお喋りで、隠し事をしなかった。
頬をやんわりと撫でると、スコールは密着していた体を少し離して、首を伸ばす。
近付く気配にクラウドが待っていれば、ほんの一瞬、触れるだけのキスがあった。
精一杯の主張をしてくれたスコールの顔は、薄暗がりの中でも判り易く赤くなっている。
「……クラウド……」
「ああ」
ここまでやったのだから。
そう訴えるスコールに、クラウドは小さく笑みを浮かべて、抱き締めた体をベッドへと沈めた。
これから部屋の温度が熱くなることを察したように、冷房のファンの音が煩かった。
7月8日と言うことで、クラスコ。
暑いのやだって言うスコールといちゃいちゃする為に、敢えて冷房で小細工をするクラウドです。
これならスコールも遠慮なく甘えられるんだから良いじゃないか、と言うことで。
冬は冬でわざと暖房の設定温度をちょっと下げて、くっついてるのが丁度良いくらいにしてるんだと思う。