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[スコリノ]歩いた軌跡を辿ったら

  • 2026/08/08 21:00
  • Posted by k_ryuto
  • Category:FF



自分のことだけを話すのは、どうにも恥ずかしい。
けれど、聞いてほしくないと思う程、嫌な話題だと言う訳でもない。
だから、どうせなら皆で同じ話が出来れば、楽しく話せるかも知れない。

理由は色々と挙げられるが、仲間たちのことをもっと知るにも、良い機会になると思ったのだ。
何せ、ここで出会った人々は、皆それぞれ違う世界から迷い込んだ───招かれた、のかも知れない───ものだから、それぞれの常識や感覚も違う。
そう言ったところを打ち明けたり、知ったりすることで、信頼関係も作ることが出来る。
リノアはそう思っているから、皆で話す機会を持つことは悪くないと思っている。

とは言っても、結局のところは、リノアも年頃の乙女だと言うところが大きいか。
コイバナと言うのは、リノアのように青春真っ盛りの少女にとって、放っておけない話題なのである。


「───って思ってたのに。集まってもくれないなんてぇ」


とある駅前にあるカフェテリアのテラスで、リノアは唇を尖らせた。
丸テーブルを囲んで一緒に席についているのは、クルルとリュックだ。


「まあまあ。皆も忙しいからね。仕方ないよ」


眉尻を下げてそう言ったのは、クルルである。
自分よりも年下の仲間に宥められては、リノアも口を噤むしかない。
それでも残念な気持ちは誤魔化せず、渋面は隠せなかった。

二人の間で、リュックは生クリーム入りのカスタムシェイクをストローで混ぜながら、


「まあカタブツも多いもんね~。あたしはこういう話題は好きだけど」


リュックはリノアが最初に誘って、一番に「行く行く!」と食いついてくれた。
お陰でリノアは他の仲間へと声をかけ易かったのだが、生憎とその輪は然程広がらなかったのである。


「コイバナだけじゃなくて、他にも話せるチャンスになると思ったのになあ。ガイアには断られちゃったし」
「そもそも喋るのが得意じゃなさそうなヒト多いよね」
「カインは来てくれるかと思ったのに。お喋りしなくても、聞いててくれるし。お店に行くのも嫌いじゃないから」
「カインは今日は銀座だっけ?」
「うん。クリスタルの様子を見てくるって言ってた。あそこは不安定なことが多いからって」
「なんか体よく逃げられた気もするけどな~」


リュックの言葉に、クルルが苦笑している。


「でも、カインのお陰で、私たちはこうしてゆっくり出来るから」
「クルルは良い子だねぇ。ま、あたしもお休み貰えるのは嬉しいし。そこは感謝してるよ」


そう言って、リュックはシェイクを一口啜る。
クリームと冷たいミルク、そして限定フレーバーのストロベリーソースの甘い味わいに、「んー、おいし!」と上機嫌だ。

クルルもココアを、リノアもラテを一口飲んで、さて、と顔を見合わせる。


「こうして集まったんだし。今日はこの三人で、色んな話しよ!」
「そうだね。じゃあ、先ずは───」
「やっぱりリノアからでしょ。言い出しっぺなんだし」


リュックの指名とともに、仲間二人の視線がリノアへ集まる。
リノアは途端に気恥ずかしさに見舞われるが、しかし、確かにことを提案したのは自分だ。
自分が色々話せば、仲間たちからも色々なことが聞けるかも知れない。


「じゃあ、えーと……」
「やっぱりカレシのことかな~?」
「え!やっぱりそれ?」
「だって元々コイバナしたかったんでしょ?」
「そうだけど。別にそれに限らなくても……」
「え~、あたしは聞きたいよ。クルルは知ってるんだよね」
「アンジェロが教えてくれるからね」


にこりと笑って言ったクルルに、リノアは足元で寝ている愛犬を見る。

クルルは生まれつき、動物と話をすることが出来るのだと言う。
それを聞いた時は俄かに信じられなかったリノアだが、日々を過ごすうちに、アンジェロが特別クルルに懐いているのが判った。
自分の言葉をクルルが通じてくれるのが、彼女にとっても嬉しいようで、よく甘えるのだ。
そうして散歩や遊び相手をしているうちに、アンジェロが色々と話してくれるのだと言う。
それはもう、色々と。

飼い主の視線を感じたアンジェロが顔を上げ、つぶらな瞳でことんと首を傾げる。
当然ながらそこに悪気も悪意もなく、リノアは肩を竦めて苦笑するしかない。


「うーん……じゃあ、うん。しょーがない。私からね」
「えへへー、楽しみだな。ね、ね、どんな男の子なの?どこで逢ったの?」


リュックは早速、テーブルに前のめりになって訊ねる。
リノアは、改めて自分から話すと言うのは恥ずかしいなぁ、と思いつつ、


「格好良いんだよ。強くて、私のこと、守ってくれるの」
「逢ったのはどこで?」
「就任式典……うーんと、パーティで。私、そこにいる人に用事があったんだけど、中々見付からないし、ダンスタイムになったから、誰か誘って見ようかなと思って。一番格好良かったから、声かけてみたの」
「リノアからだったんだ」
「最初は“踊れないんだ”って言ってたんだけどね。あれ、踊りたくなかったんだろうな~」


いつかの出逢いを思い出して、リノアは苦笑する。
彼の性格を考えると、そもそも、ああした華やかな雰囲気自体が好きではないだろう。
誰とも関わるまいと、意図的に壁の花になっていたのは想像に難くない。

それでも、リノアは彼を見付けて、声をかけたのだ。
見上げていた空から視線を外した後、彼と目が合ったのは、単なる偶然ではないと思っている。


「その後で、私が出した依頼に、彼が派遣されてきて。最初はケンカばっかりだったなぁ」
「そうなの?」


意外そうにクルルが目を丸くする。
アンジェロと色々話している彼女だが、どうやら出会いの頃のことは聞いていないようだ。

リノアはカフェラテを一口飲んで、ほうっと頭上を見上げる。


「私と全然違うんだ。すごく現実的で、理性的って言うか。冷たい人だって、最初はそう思ってた」
「え~、なんか想像と違うかも。リノアみたいに明るいタイプかと思ってた」
「あはは、ないない」


リュックの言葉に、リノアはひらひらと手を振る。
そう言った言葉自体、彼とはまず縁遠いものであると、リノアはよく知っている。


「SeeD……んー、特別な傭兵になる為に、子供の頃からずっと頑張って来た人だったから。あの時、一緒にいた皆、そう言う所はあったんだよね。私はそう言うのじゃなかったから、よくぶつかっちゃったの」


身を寄せていたレジスタンスの下で再会して、短い間に、何度口論をしただろう。
小さなものから、声を大きくして言い合いになったものまで、数えれば片手が埋まる。
それは彼一人とのものではなくて、仲間たちも巻き込んでのこともあった。

あの頃、彼らにとって異質だったのは、きっとリノアの方だった。
リノアが彼らと接して感じていた感覚の違いを、彼らも感じていたに違いない。


「───で。それが今は、だーいすきなカレシになったのはなんで?」
「なんか、そういう言われ方するとすごく恥ずかしい~!」


にやにやと聞いてくるリュックに、リノアは途端に顔が沸騰する。
火照った頬に両手を当てて冷却を試みるが、まるで効果はなかった。

赤い顔のまま、リノアはえーと、えーと、と考えて、


「なんて言うか、えーと……最初は、私のこと、守ってくれる人だって、思ったって言うか……」
「どこでどこで?」
「んんん~……」


矢継ぎ早にリュックに訊かれ、リノアの頭から湯気が出る。

あれは、特別な言葉だ。
思い出すと、あの時に感じた胸の鼓動が、巻き戻ったように再来する。


「……“俺の傍から離れるな”、って。そう、言ってくれたから」
「わ」
「ひゃあ~」


赤い顔で、彼の言葉を反芻する。
その言葉があまりにも直線的だったからか、或いはリノアの表情につられたか。
クルルとリュックの頬にも、判り易く紅が差した。

それはきっと、彼にとって、なんでもないただの忠告だった。
自分は彼のクライアントであったし、彼は傭兵として、クライアントを守るのは義務だと思っていたに違いない。
実際、彼は初めてその言葉を発した時のことを忘れていたし───G.F.の所為だと彼は主張したが───、リノアが感じたほど、特別な意味はなかったのだろう。

けれど、それでも、リノアにとっては特別だったのだ。
ともすれば自分が死んでいたかも知れない状況と、得体の知れないものを前にした時の、言葉にならない恐怖。
一人ではどうすることも出来ないと、そんな自分を知った直後に向けられた、あの一言。
だから、もう一度その言葉を聞いた時が嬉しかったし、必死に誤魔化している様子も含めて、少しおかしくて胸に残った。

リノアは真っ赤になった顔を両手で隠した。
そこにある仲間たちの顔が見れないくらい、顔が緩んでいるのが判る。


「う~……自分で言うとこんなになるなんて思わなかったよぅ」
「ふふ。リノアの心の中、ぽかぽかしてる感じ」
「……クルル、アンジェロだけじゃなくて、私の心の中も見えるの?」
「まさか。見てたら判るよ」


少女の柔らかな笑みに、リノアは益々体温が上がる。
自分が分かり易いタイプの人間であることは自覚しているが、こうも穏やかに見つめられると、なんとも言えない気持ちが湧き上がってくる。

手扇で熱を冷まそうと試みるリノアに、リュックが興味津々に顔を寄せる。


「その言葉が決定打みたいな?」
「ん?うーん……それも、結構あるけど……」


改めてリノアは、出来事を振り返る。

彼との記憶は、色々な出来事が重なっていて、一言で言い表せないものばかりだ。
気付いたら宇宙に漂っていたとか、それを彼が捕まえに来てくれたとか。
そんな場所まで自分を追い駆けて来てくれたことが、涙が出そうになるほど嬉しかったとか。
その後に、もう二度と逢えなくなるんだと、離れなければいけないのだと悟った時の、悲しさも。

───そんな中で、リノアにとって一番嬉しかったのは、やはり、


「……ぎゅーって、してくれたんだ」
「ぎゅー?」


首を傾げるクルルとリュックに、リノアは、「うん」と頷いた。


「触るのも、誰かに触られるのも、苦手な人なの。でも、私のこと、抱き締めてくれた」


そして、彼は言ってくれた。
“魔女”でも良い、と。

嫌われる前にいなくなりたいと、一度はリノア自ら離した手を、彼は追い駆けて来てくれた。
冷たく霞んでいく意識の中で、呼ぶ声に目を開けた時の感情を、なんと表せば良いだろう。

“魔女”と言う存在の意味を、それが持つ力の恐怖を、異世界の仲間たちに説明するのは難しい。
リノアの持つその力は、この世界でも異質なものだが、それがアグレシオを退ける力になるからか、誰もリノアを怖がらなかった。
そのことがリノアにとって、どんなに安堵を齎したか、知る人はいない。
だから、彼のあの言葉が、抱き締める腕が、“魔女”になったリノアにとってどんなに特別だったのかも、想像は出来ないのだ。

頬に赤みを残したまま、瑪瑙の瞳を柔く瞬かせるリノアに、クルルとリュックは顔を見合わせて小さく笑う。


「その人、リノアのことがとっても大事なのね」
「そんな風にして貰えたら、好きになっちゃうね」


二人に合わせて言われて、リノアの頬が熱くなる。
今日は完全に赤面症だ。


「んん~、もう限界。私ばっかりじゃなくて、皆の話も聞きたい!」
「そう言われてもなあ。あたし、そう言う人いないからよく判んないよ」
「私も……」
「えー!」


仕返しとばかりに話題をそのまま投げたリノアだが、返ってきたのはすげないもの。
これでは何の為に話したのだか、と頬を膨らませるリノアに、クルルが宥める形で言った。


「コイバナは難しいけど、私の仲間の話なら出来るよ。一緒に旅してた時のこととか」
「あたしもそれなら良いよ。ってことで、コイバナの続きはまた今度!」
「今度って、また同じようなことにならないかなぁ……」
「まーまー。リノアのカレシの話もっと聞きたいし、平等に、コイバナも誰か話してくれる人捕まえようよ」


リュックにも援護されて、リノアも拗ねた顔は引っ込めた。
何であれ、皆で話をする機会が作られるのは、リノアにとって嬉しい。
こうして積み重ねていけば、もっと気軽に、色々な話ができるようになるかも知れない。

それに、とリノアは思う。


(こうやってスコールのことを思い出せるなら、寂しいばっかりじゃなくなるかも知れない)


どんなに思いを馳せても、この世界に彼はいない。
だから、思い出す度に寂しさも募る気持ちは誤魔化せない。
けれど、こうして共有してくれる人がいたら、ふとした時に感じる寂しさも薄らぐ気がする。
誰かに話す度に、その思い出が増えていくのは、嬉しかった。

足下に身を寄せる愛犬の毛並みを感じながら、旅の思い出を語り始めたクルルの話に耳を傾ける。
それが終わったら、リュックの番になるだろう。
次に自分の番になった時、今度は何を話そうかと巡らせるのだった。





デュエルムメンバーでプチ女子会。
コイバナしたい!と言うリノアのFINEから、素直に集まってくれそうなメンバーに付き合って貰いました。

リノアのコイバナって言うか、スコールトーク。
もっと話すと、スコールが格好良いだけじゃなくて可愛いところもあるとか、色々語ってくれると思う。
リノアは自分の好きなものを誰かと共有できるのは楽しいタイプだと思うので。
そもそも現状、身内のことならあるけれど、自分を当事者としてコイバナできるメンバーが少ないと言う。ストレートにヒロイン枠から参戦してるのは、今のところリノアだけですしね。

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